インフルエンザ予防と対策

新型コロナとの同時流行に備えて

正しい知識と対応を身につけよう!

 例年秋から春にかけて猛威を振るうインフルエンザ。
 普通のかぜとは異なり、何日も学校や会社を休まなければならないだけでなく、高齢者や乳幼児、持病(基礎疾患)のある人などは重症化しやすく、命にかかわることもあります。
 インフルエンザにかからない、うつさないためには、一人ひとりの心がけが大切です。正しい知識と対応力を身につけ、流行に備えましょう。

重症化に注意が必要

 例年、秋から春にかけて流行するインフルエンザを「季節性インフルエンザ」と呼びます。2009年に出現した新型インフルエンザ(A/H1N1)も、流行の沈静化に伴って、2011年4月1日以降は季節性インフルエンザとして扱われています。

 インフルエンザの症状は、かぜよりも強く、38℃以上の発熱が比較的急速に始まるのが特徴で、頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感(けんたいかん)などの全身症状のほかに、のどの痛み、せき、鼻水なども出ます。通常こうした症状が5日間ほど続きます。

 また、インフルエンザに感染した場合、気管支炎や肺炎などを併発することも多く、65歳以上の高齢者がかかると重症化し、死に至ることも少なくありません。また、乳幼児も脳炎・脳症を起こすと命にかかわることがあります。

例年、人口の1~2割が感染

 国立感染症研究所感染症疫学センターによると、季節性インフルエンザには例年、人口の1割から2割が感染しているそうですが、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2019~2020年以降は、感染対策が奏功したためか、インフルエンザの報告数は激減していました。しかし、2023年はインフルエンザの流行が広がり、春以降も収束せずに季節外れの流行が続いています。日本国内では3年間にわたりインフルエンザの流行がなかったため、社会全体の集団免疫が低下していることも原因のひとつと考えられています。

 一度感染した人は免疫をもつため、同じタイプ(型)のインフルエンザウイルスに感染しにくくなります。しかし、インフルエンザウイルスには、いくつかの型があり、突然変異を起こすこともあって流行する型が常に変化することから、世界中で流行を繰り返します。

 インフルエンザウイルスに対しては、従来からワクチンによる予防接種が行われており、毎年流行前に接種を受けることがすすめられています。

 また、流行期には学校閉鎖や学級閉鎖になったり、仕事を休まなければならない状況が起こり得るので、予防接種だけでなく、手洗いやうがいなどの感染対策を心がけることが大切です。


インフルエンザの予防接種

今シーズンは、A型2種+B型2種の4種混合ワクチン

 インフルエンザの重要な予防法はワクチンの接種です。

 予防接種を受けても、インフルエンザの感染を100%予防できるわけではありません。しかし、予防接種を受けることで、抗体ができて、インフルエンザにかかりにくくなり、重症化を防ぐことができるといわれています。また、集団においてより多くの人が接種すると、感染者が減少することが報告されています。

 今シーズン(2023/2024)のインフルエンザワクチンは、A型2種、B型2種のワクチン株を使用した4種混合ワクチンです。

今シーズンの4種混合ワクチン
  • A/Victoria(ビクトリア)/4897/2022(IVR-238)(H1N1)
  • A/Darwin(ダーウィン)/9/2021(SAN-010)(H3N2)
  • B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)
  • B/Austria(オーストリア)/1359417/2021(BVR-26)(ビクトリア系統)

 インフルエンザワクチンの効果持続は、接種から約5ヵ月間といわれており、流行する型は毎年変わるため、昨シーズンにワクチン接種を受けた人も、あらためて今シーズンも接種することがすすめられます。また、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行が今シーズンは起こっているので、医療機関に患者が殺到するリスクを少しでも低下させるためにも、ぜひ接種を検討してください。

対象は生後6ヵ月以上の人

 接種の対象になるのは生後6ヵ月以上の人です。

 13歳未満は免疫がつきにくいこともあり、2回に分けて接種します(1回目から2~4週間あけて2回目を接種)。13歳以上は1回でよいとされています。特に、高齢者や乳幼児、妊婦・持病(基礎疾患)のある人など重症化リスクの高い人は、積極的に接種を受けることをおすすめします。

 ほかに、重症化リスクの高い人の家族、受験生とその家族、学校や幼稚園・保育所、介護施設などで集団生活をしている人や医療関係者、仕事や学業に支障をきたす可能性の高い人も、ワクチンの接種がすすめられます。

なお、厚生労働省は、今シーズンのインフルエンザワクチンの供給について、

  • 通常年の使用量を超える供給量が見込まれる
  • 比較的早期にワクチンが供給されるスケジュールになっている

としています。


 ワクチンの効果が現れるまでには、接種から2週間ほどかかるので、早めに接種を終えておくとよいでしょう。

 接種の料金は基本的には自費ですが、健康保険組合や自治体などによっては補助金が出る場合がありますので、健康保険組合や自治体にお問い合わせください。

高齢者は「肺炎球菌ワクチン」の接種も

 通常の季節性インフルエンザで、亡くなる人の多くは高齢者で、インフルエンザウイルスの感染をきっかけに、細菌性肺炎を併発して重症化するケースが大半です。成人の細菌性肺炎では、肺炎球菌による肺炎の発症が最も多く、重症化しやすい傾向がみられます。このため65歳以上の高齢者は、インフルエンザワクチンとともに肺炎球菌ワクチンの接種が望まれます。

 2014年10月1日から、高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンが定期接種となり、一部公費の助成を受けることができるようになっています。対象となるのは、2023年度(2023年4月1日から2024年3月31日まで)に65、70、75、80、85、90、95、100歳になる人と、60歳以上65歳未満で、心臓、腎臓、呼吸器の機能において、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害がある人や、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染により、免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある人です。定期接種の接種回数は1回です。対象年齢や接種費用など、詳しくはお住いの自治体にお問い合わせください。

 肺炎球菌ワクチンの効果は5年以上続くといわれていますが、その効果は時間の経過とともに低下します。そのため、重症化のリスクが高い65歳以上の高齢者や、慢性の基礎疾患がある人は、初回のワクチン接種から5年が経過したら、再接種を受けることが推奨されています。


インフルエンザの予防方法

一人ひとりの用心で感染しない・させない

 インフルエンザの予防と拡大の防止には、「感染しないこと」、そして感染しても「人にうつさないこと」が大切です。それには、一人ひとりが「すべきこと」をきちんと実行することです。

感染しないためにすべきこと

  • 体調を良好に保つ。
  • 手洗いをこまめにする。
  • 清潔でない手で顔にむやみに触らない。
  • 流行が拡大している際は、人混みへの外出はできるだけ避ける。
  • 感染した人に近づくときはマスクを着用する。
  • 発熱をしている人やせきをしている人に、必要以上に接触しない。


人にうつさないためにすべきこと

  • せきが出ているときはマスクを着用して、 「せきエチケット」を守る。
  • 熱が下がってから2日間(幼児は3日間)経つまでは、外出を控える。
  • 家では家族と別の部屋で過ごし、接触を減らす (特に高齢者や乳幼児)。


手洗いは15秒以上かけてていねいに

 外出から帰ったとき、調理や食事の前、トイレのあとなどこまめに手洗いします。石けんを泡立て、手のひらだけでなく、下記のような見落としがちな部分もていねいに洗いましょう。石けんは固形でも液体でもかまいません。また、石けんは薬用でなくてもウイルスを洗い流せます。

【指の間】

両指を組んで互いに押し合うように
【親指】

親指を握り、その手を回転させて
【指先】

反対側の手のひらにこするように
【手首】

手首をつかんだ手を回転させて

うがいは感染症の予防に役立つ
 インフルエンザウイルスそのものをうがいで十分に洗い流す効果は期待できませんが、のどの表面についたウイルスや細菌などには効果があるとされています。また、インフルエンザにかかると肺炎球菌やブドウ球菌などに感染しやすくなるので、これらへの予防効果も期待できます。
 うがいをする際は、最初に口に水を含み1~2回ブクブクして捨てます。次に、のどの奥までガラガラうがいを2~3回します。

マスクの着用は感染の拡大を防ぐ

 家庭用マスクで、インフルエンザを予防できるかどうか、明確な根拠があるわけではありません。しかし、感染して症状のある人が不織布のマスクを着用することで、ほかの人へ感染を広げない効果は期待できます。

【家庭用マスクには3タイプ】

布製マスク

ガーゼや綿織物などで作られたマスクで、多くは洗濯して使用できる/保湿性・保温性が高い/ウイルスや菌が透過しやすい欠点も

プリーツ型マスク(不織布タイプ)

顔前部にフィット/口の動きに柔軟に対応/呼吸が楽

立体型マスク(不織布タイプ)

すき間なくピッタリとフィット/息苦しさやしゃべりにくさが緩和/口紅うつりが少ない

せきエチケットを守ろう

自分が感染したら、外出先や家庭内でも「せきエチケット」を守りましょう。これは感染の拡大を防ぐために世界中で提唱されている公共のマナーです。


  • せきやくしゃみが出ているときは、マスクを着用。周囲でせきをしている人がいたらマスクの着用をお願いする。
  • 人の近くにいてせきやくしゃみが出そうなとき、マスクがなければ顔をそむけてティッシュペーパーや布で口を覆う。ティッシュペーパーや布がなければ上着の袖で口元を押さえる。
  • せきやくしゃみをするときは、周囲の人から2m以上は離れる。
  • せきやくしゃみを押さえた手は、石けんで洗う。


自分に合ったマスクサイズの測り方

 メーカーによってさまざまなサイズがあるため、選ぶのに迷うでしょう。一般社団法人日本衛生材料工業連合会では次のような方法で顔のサイズを測り、それに合ったマスクを選ぶようにすすめています。


STEP.1
親指と人差し指でL字形を作ります。



STEP.2
L字形のまま、耳の付け根の一番高いところに親指の先端を当て、鼻の付け根から1㎝下のところに人差し指の先端を当てます(L字形の幅を調節)。



STEP.3
親指から人差し指までの長さを測り、その長さに応じて、以下のサイズがおすすめです。



マスクサイズの目安

9~11cm→子ども用サイズ
10.5~12.5cm→小さめサイズ
12~14.5cm→ふつうサイズ
14cm以上→大きめサイズ

すき間のできないマスクの装着法

  1. マスクの上部を鼻の上に押し当て、下部をあごにかかるように引き下げる。
  2. 鼻にマスクを押し当てたまま、ひもを耳にかける。
  3. ほおとマスクの横の間にすき間ができないよう注意する。

使い捨てマスクの処理のしかた

 マスクを顔から外すときは、フィルター部分には触らないようにして耳にかけたひもを持ちます。そのままフィルター部分に触れずに、ふたのついたゴミ箱にそっと入れます。その後、手洗いやアルコール消毒をしましょう。

職場で行う感染予防対策

 職場におけるインフルエンザ対策として最も重要なことは、インフルエンザに感染した、または感染した恐れのある人は職場に行かないということです。感染したまま出勤すると、職場で広がるなど、ほかの人に迷惑をかけることにつながります。普段からお互いに協力し合い、体調不良の際は休めるような雰囲気づくりをすることが大切です。

感染予防を心がける
  •  自宅療養・・・・・・症状が比較的軽い場合は自宅療養を促す。
  •  周知徹底・・・・・・手洗い・うがい、せきエチケット、人混みを避けるなどの取り組みを社・職員に呼びかける。
  •  呼びかけツールの使用・・・・・・社内報、メール、チラシ、ポスターなど。
  •  体調確認・・・・・・始業前に朝礼やミーティングを行い、体調を崩している人がいないかどうか、社・職員同士で確認し合う。
  •  仕事中断・・・・・・体調不良の人はすぐに仕事を中断させる。
  •  受診・・・・・・症状が重い場合や重症化のリスクが高い人は、医療機関の受診を促す。

職場環境を整える
  •  消毒液設置・・・・・・ロビーや部屋の入り口、洗面所などに設置する。
  •  定期的に清掃・・・・・・ドアノブ、エレベーターのボタン、トイレの水洗バー(ボタン)、水道の蛇口、テーブルなど、人の手がよく触れる場所を掃除する。
  •  うがい液は置かない・・・・・・真水でうがいをするように指導し、うがい液ボトルやキャップの共用による感染を防ぐ。

感染者への対応や体制を用意

 職場で感染者が出た場合に冷静な対応ができるよう、あらかじめ以下のような職場内の体制を検討し、準備しておきましょう。
  •  感染した社・職員がとるべき行動
  •  感染した社・職員へのとるべき対応
  •  社・職員の家族が感染したときの対応
  •  感染した社・職員と同じ部署の人への対応


感染が疑われるとき

こんな症状があったらインフルエンザかも

 普通のかぜの場合は、のどの痛み、せき、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が中心で、熱があってもそれほど高熱にはなりません。
 一方インフルエンザでは、普通のかぜの症状に加えて、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛や筋肉痛、倦怠感(けんたいかん)など、全身の症状が突然現れます。
 また、インフルエンザに感染した場合、気管支炎や肺炎なども併発することが多く、65歳以上の高齢者がかかると重症化し、死に至ることも少なくありません。乳幼児も脳炎・脳症を起こすと命にかかわることがあります。

重症化リスクの高い人はすぐに受診を

 インフルエンザにかかっても、多くの人は1週間程度で回復します。症状が比較的軽い場合は自宅療養で治るため、必ずしも医療機関を受診する必要はありません。ただし、妊婦や、持病(基礎疾患)のある人など(重症化リスクの高い人)は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。
 発症から48時間以内に抗インフルエンザウイルス薬を使用すると、発熱期間が短縮できます。受験生や長く仕事を休めない人なども、医療機関を受診するとよいでしょう。まずはかかりつけ医に連絡しましょう。
 持病(基礎疾患)のない人でも、次のような重い症状がみられたり、病状が急に変わったら、すぐに医療機関を受診してください。

こんな症状があったら、すぐに受診を

子ども
  • 呼吸が速い、息苦しそうにしている。
  • 顔色が悪い(土気色、青白いなど)。
  • 嘔吐(おうと)や下痢が続いている。
  • 落ち着きがない、遊ばない、反応が鈍い。
  • 症状が長引いていて、悪化してきた。

大人
  • 呼吸困難または息切れがある。
  • 胸の痛みが続いている。
  • 嘔吐や下痢が続いている。
  • 3日以上、発熱が続いている。
  • 症状が長引いていて、悪化してきた。

受診するときはマスクを着用

 かかりつけ医がいないなど、どの医療機関を受診したらよいかわからない場合は、都道府県や市区町村の相談窓口へ問い合わせて、医療機関を紹介してもらいましょう。
 医療機関には、何らかの病気をもった人が大勢来院しています。受診する際は、周囲の人に感染させないために、せきエチケットを徹底してください。必ずマスクを着用し、マスクがないときは、ティッシュペーパーなどで口と鼻を覆います。使ったティッシュペーパーはすぐにゴミ箱へ捨てましょう。


自宅療養のポイント

療養に努め、家族への感染予防にも気をつける

 インフルエンザにかかった場合、症状が重い人や重症化リスクが高い人は必要に応じて入院治療となりますが、多くの人は自宅で療養します。
 回復を早め、ほかの人に感染させないためにも、次の点を心がけましょう。

1 せきエチケットを守る

 家族への感染を防ぐために、自宅でもせきエチケットを守り、マスクを着用しましょう。マスクには、のどの乾燥を防ぐ効果も期待できます。

2 こまめに手を洗う

 手に付着したせきやくしゃみのしぶき(飛沫)を洗い流しましょう。

3 安静にして十分に睡眠をとる

 睡眠を十分にとり、高熱やせきのために熟睡できない場合でも、横になり、目を閉じるなどして体力を回復させましょう。

4 水分と栄養を補給する

 脱水を防ぐために、こまめに水分を補給しましょう。普段より尿の回数や量が少し増える程度に飲むと脱水を予防できます。また、おかゆやうどんといった温かくて消化のよいものや、ゼリーやプリンなどのどごしのよいものがおすすめです。

5 できるだけ家族とは別の部屋で療養する

 外出を控えるとともに、家族にうつさないように、できるだけ家族とは別の部屋で療養しましょう。

6 湿度を保つ

 部屋の空気が乾燥している場合は、加湿器などを使って適正な湿度を保ちましょう。

7 こまめに換気をする

 ウイルスが室内にこもらないように、1日に数回窓を開けて換気しましょう。

8 症状が悪化したらすぐに受診を

 自宅療養中に症状が悪化したら、すぐにかかりつけ医を受診してください。
 呼吸が苦しい、意識がもうろうとするなど、症状が重い場合は、救急車を呼びましょう。

外出は解熱後2日経ってから

 熱が下がっても、インフルエンザの感染力は残っています。完全に感染力がなくなる時期は明らかではありませんが、少なくとも熱が下がってから2日目までは外出しないほうがよいでしょう。
 なお、学校保健安全法ではインフルエンザによる出席停止期間を、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」としています。

家族もマスクと手洗いを

 同居している家族への感染を確実に防ぐことは困難で、特に乳幼児がいる場合は難しいといえます。できるだけ感染の危険性を減らすために、マスクの着用やこまめな手洗いなどを心がけましょう。

 また、持病(基礎疾患)のある人や妊娠中の人は、感染予防を徹底するとともに、念のためかかりつけ医に相談するとよいでしょう。医師の判断により、予防のために抗インフルエンザウイルス薬を処方される場合があります。

同居者の心得
  • 感染者と接する場合は、念のためマスクを着用する。
  • 感染者の看護をした後は、手をこまめに洗う。
  • できるだけ感染者とは別の部屋で過ごす。
  • タオルは感染者と共用しない。

 ※感染者の使用した衣類やタオル、食器類などは、通常の洗濯・洗浄および乾燥で十分です。


重症化リスクが高い人

インフルエンザの重症化リスクの高い人はこんな人

 元々インフルエンザは、高齢者や乳幼児などが感染すると症状が重くなりやすい(重症化しやすい)ことが指摘されてきました。特に65歳以上の高齢者はインフルエンザによる死亡者の多くを占め、インフルエンザが大流行した年には、高齢者の冬季の死亡者数が例年より多くなるほどです。
 このほか妊婦、持病(基礎疾患)のある人なども重症化しやすいことがわかっています。

重症化リスクの高い人

  • 高齢者
  • 乳幼児
  • 妊婦
  • 持病(基礎疾患)のある人
    • 慢性呼吸器疾患
    • 慢性心疾患
    • 糖尿病などの代謝性疾患
    • 慢性腎不全
    • ステロイド内服などによる免疫機能不全 など

*これらに該当しない疾患のある人たちも、医師の判断により重症化のリスクが高いととらえられることもあります。例えば、日本癌学会の見解では、免疫状態が十分でないがん患者をハイリスク者としています。

どうして、どのように重症化するの?

 高齢者がインフルエンザにかかると、細菌性の肺炎などを併発したり、持病(基礎疾患)が悪化したりして、命にかかわる恐れがあります。
 乳幼児ではインフルエンザ脳症、ARDS(急性呼吸促迫症候群)、けいれん重積(けいれん発作が30分以上続く)などの合併症がみられますが、その大部分を占めるインフルエンザ脳症を起こすと、後遺症が残ったり、亡くなったりする場合があります。
 妊婦も肺炎などを合併しやすく、重症化しやすいことがわかっています。特に妊娠週数が進むにしたがって、より重症化しやすくなるため注意が必要です。
 持病(基礎疾患)のある人で、その病気の治療の経過や管理が良好でない場合は、インフルエンザの症状が重症化しやすくなります。また、その病気自体が悪化する場合もあります。

 それでは、なぜこれらの人たちは重症化しやすいのでしょうか。まだはっきりとはわかっていませんが、生物が異物を排除するために元々もっている免疫の機能が低下しているためではないかと考えられています。

 高齢者では加齢による機能低下があり、乳幼児は機能が未完成であり、妊婦では胎児を異物と認識しないよう免疫機能が抑制されており、持病(基礎疾患)のある人は病気のために免疫機能が低下していると考えられます。

重症化を防ぐために

まず「予防」から

 重症化させないための大前提は「インフルエンザに感染しないこと」です。インフルエンザに感染しやすいかどうかという点では、重症化リスクの高い人とそうでない人との間に、大きな違いはないとされます。
 予防の基本は、同様に「予防接種を受け、できるだけ人混みを避け、こまめに手洗い・うがいをすること」です。

日ごろから、健康管理を心がけよう

 重症化リスクの高い人のすべてが、重症化するというわけではありません。前述したように、持病(基礎疾患)のある人のなかでも、治療の経過や管理が良好でない場合は、インフルエンザに感染すると重症化しやすいことがわかっています。
 そのため、日ごろから健康管理を心がけることが大切です。栄養バランスのよい食事や十分な睡眠を心がけ、適度な運動を習慣にして、ストレスは早めに解消しましょう。
 これは、重症化リスクの高い人だけでなく、ほかの人にとっても大切な感染対策です。

感染が疑われたら、すぐに受診を

 かぜのような症状などがありインフルエンザへの感染が疑われる場合は、すぐに主治医(持病のかかりつけ医)に相談し、受診しましょう。重症化しないためには、早期治療が大切です。
 それには、日ごろから主治医とのコミュニケーションを図り、相談しやすい関係を築いておくことです。

重症化リスクの高い人の治療

 重症化予防には早めの対応が大切です。インフルエンザに感染したかもしれないと思われる何らかの症状(急な発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感、のどの痛み、せき、くしゃみ、鼻水など)が出たら、すぐに主治医(持病のかかりつけ医)に電話などで相談し、受診すべきか尋ねましょう。
 呼吸が苦しい、食事がとれない、水分がとれないなどの症状が出たら、すぐに受診します。
 受診して比較的軽症と診断された人は、自宅療養となります。薬を処方された場合は、指示どおりに使うことが大切です。また、療養上の注意を医師に確認しておきましょう。
 医師の診断で重症化が心配される場合は、入院治療が必要になることもあります。症状が緩和すれば退院して、自宅療養となります。

 インフルエンザの治療薬や持病の薬との飲み合わせなどに関する詳細は診断と治療をご覧ください。


診断と治療

重症の場合、重症化リスクの高い人は、早期受診を

 インフルエンザに感染しても、抗インフルエンザウイルス薬を用いずに回復する人も少なくありません。回復するまでの期間は、個人差はありますが5日程度です。抗インフルエンザウイルス薬を内服した場合は、3日程度で症状が治まることが多いようです。
 しかし、症状が重い場合や、重症化リスクの高い人(高齢者や乳幼児、妊婦や持病(基礎疾患)のある人など)は、なるべく早く受診しましょう。また、仕事を何日も休めない人なども、早期受診が早期回復につながります。

 インフルエンザの診断は、一般的に迅速検査キットと呼ばれる簡易な検査で行われます。鼻やのどの粘膜をこすり取り、ウイルスの有無を調べるものです。検査後15分くらいで結果がわかります。感染初期にはウイルス量が少なく、実際には感染しているのにウイルスが検出されない場合もあります。そういうときは、流行状況や症状などから医師が判断します。

発症後48時間以内ならば、抗インフルエンザウイルス薬で早期回復

 発症から48時間以内であれば、医師の判断で抗インフルエンザウイルス薬が処方されることがあります。インフルエンザウイルスの増殖を抑えて、発熱期間を短縮することができます。48時間を過ぎた場合は、自然に発熱が治まってくるまでの期間はあまり変わらないので、抗インフルエンザウイルス薬の投与は行わないこともあります。

 主な治療薬として、飲み薬であるオセルタミビル(商品名:タミフル)、アマンタジン(商品名:シンメトレル。A型インフルエンザに適応)、バロキサビル・マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)、吸入薬であるザナミビル(商品名:リレンザ)、ラニナミビル(商品名:イナビル)、点滴薬であるペラミビル(商品名:ラピアクタ)があります。

タミフルは子どもが使っても大丈夫?

 タミフルと子どもの異常行動に関する副作用報告が厚生労働省に寄せられましたが、はっきりとした因果関係はわかっていません。急に走り出す、高いところから飛び降りようとするなど、子どもの異常行動は、タミフルの服用の有無にかかわらず、現れるケースがあることがわかっています。
 タミフル以外の抗インフルエンザウイルス薬を使用した場合も、異常行動に対する注意が必要です。
 異常行動による事故を防ぐため、発熱から少なくとも2日間は、就寝中を含め、特に小児・未成年者が容易に住居外へ飛び出さないよう、以下のような対策を講じましょう。

  • 玄関やすべての部屋の窓を確実に施錠する。
  • 窓に格子のついた部屋がある場合は、その部屋で寝かせる。
  • ベランダに面していない部屋で寝かせる。
  • 一戸建てに住んでいる場合は、できるだけ1階で寝かせる。

吸入器を子どもが使うときは、しっかり見守ろう!

 リレンザやイナビルは吸入器を使った投与方法のため、5歳以上の子どもならば、使用可能とされています。ただし、適切に吸入できるように、大人が注意深く見てあげましょう。

解熱鎮痛薬の使用は注意が必要!

 インフルエンザの高熱に対して、アセチルサリチル酸(商品名:アスピリン〈処方薬〉、バファリン〈市販薬〉)や、ジクロフェナクナトリウム製剤(商品名:ボルタレン〈処方薬〉)、メフェナム酸(商品名:ポンタール〈処方薬〉)、イブプロフェン(商品名:ブルフェン錠やブルフェン顆粒など〈処方薬〉、イブA錠〈市販薬〉)などの解熱鎮痛薬を使うと、急性脳症のリスクが高まるため、日本ではインフルエンザの罹患者へは、使用禁止とされています。
 また、これらの解熱鎮痛薬は、ぜんそく発作などを引き起こすリスクもあり、注意が必要です。
 今のところ、アセトアミノフェン(商品名:タイレノール、カロナール、キオリトル)だけが、インフルエンザで使用できる解熱鎮痛薬です。ほかの市販薬では、アセトアミノフェン以外の解熱鎮痛薬も配合されていますので、薬剤師に確認することをおすすめします。
 いずれにしても解熱鎮痛薬を使うときは、家族の使い残しや市販の常備薬を使わず、医師や薬剤師に相談してください。

持病(基礎疾患)の薬の併用は大丈夫?

 抗インフルエンザウイルス薬と持病(基礎疾患)の薬との飲み合わせで、副作用が出ることはほとんどありません。インフルエンザに感染したときも、持病(基礎疾患)の薬は続けましょう。薬を勝手に中止すると、持病(基礎疾患)が悪化することがあります。

 ただし、インフルエンザに感染したときは、薬の使い方がいつもと異なる場合があるかもしれませんので、詳しいことは主治医(持病のかかりつけ医)やかかりつけの薬局に相談しましょう。

妊娠中に抗インフルエンザウイルス薬を飲んで大丈夫?

 妊婦が抗インフルエンザウイルス薬を飲んでも、本人や赤ちゃんに有害な副作用が出るという報告はありません。むしろインフルエンザの重症化を防ぐために、感染が疑われたらすぐに受診して用いることがすすめられています。

【参考Webサイト】

参考 リレンザ使用上の注意厚生労働省ホームページ

参考 タミフル使用上の注意厚生労働省ホームページ


情報源・相談窓口・備蓄品リスト

情報源・相談窓口

 インフルエンザについての最新の情報は、国や公的機関、都道府県や市区町村などの各自治体から、広報誌やウェブサイトなどを通じて発信されています。これらの情報を元に、それぞれが適切な行動をとり、感染の予防と拡大防止に努めましょう。


ホームページアドレスや電話番号は、状況に応じて変更になる場合がありますので、ご注意ください。

【インフルエンザ関連情報の主なWebサイト】

* 都道府県や市区町村の詳細な情報は、各自治体のホームページでご確認ください。

厚生労働省 感染症・予防接種相談窓口

TEL: 0120-331-453
(受付:土日祝日・年末年始を除く 9:00~17:00) 

いざというとき備えておきたいものは?

 インフルエンザが流行しているときは、どうしても必要なとき以外は外出しないようにすることが感染予防の大きなポイントです。インフルエンザにかかってしまったときは、数日から1週間くらいの療養が必要です。ほかの人にうつさないためにも自宅から出ないようにしましょう。
 いざというときのために、特に一人暮らしの人は1~2週間分くらいの食品や日用品の買い置きがあると安心です。

 インターネットや電話からの注文を受けて、生鮮食料品や日用品を家まで届けてくれる宅配サービスを行っている店舗もあります。利用できる環境の人は、試してみるのもおすすめです。

〈食品買い置きのポイント〉

(1)常温で保存できるものを中心に、主食、主菜、副菜をそろえて
主食 米、もち、乾燥めん(うどん、そば、スパゲッティなど)、シリアルなど
主菜 調理された肉や魚の缶詰、レトルト食品、魚肉ソーセージなど
副菜 冷蔵庫に入れずに保存できる野菜
(さつまいも、じゃがいも、たまねぎ、かぼちゃなど)、
乾物(ひじき、干ししいたけ、切り干し大根、乾燥わかめ、高野豆腐、豆など)など

 生鮮食品が少なくなりがちなので、たんぱく質やビタミン・ミネラル類の不足に注意しましょう。ドライフルーツや果物の缶詰、野菜ジュース、栄養補助食品の利用などもおすすめです。

(2)食べ慣れていて、調理が簡単なものを

 自分の好きなものや食べ慣れたものなら、無理なく食べられます。また、特に一人暮らしの人では、体調が悪いときに、毎日きちんと三食作るのが大変です。レトルト食品やインスタント食品も保管しておきましょう。

(3)調味料も忘れずに

 塩、砂糖、しょうゆ、みそ、食用油などは、長期に保存できるので余分に買っておきましょう。

(4)普段の食事に活用して無駄をなくそう

 買い置きしてある食品は普段の食事作りにも利用し、使った分を新しく補充していけば、賞味期限切れで無駄にすることなく備蓄ができます。

(5)いつもの買い物のときに少し多めに購入

 一度に大量の保存食を購入すると、経済的な負担が大きくなってしまいます。普段買い物をするときに、1品や2品を余分に購入して少しずつ買い置きを増やしていけば、それほど負担はかからないでしょう。

〈日用品&インフルエンザ対策用品の買い置きポイント〉

(1)日用品

 トイレットペーパー、生理用品、紙おむつ、ティッシュペーパー、食器用洗剤、洗濯用洗剤など、なくなるとすぐに困ってしまう品は、余分に買い置きをしておきましょう。

(2)インフルエンザ対策用品

 インフルエンザの流行が広がると、不織布製マスク、体温計、水枕・氷枕、手洗い石けん、消毒薬、経口補水液など、感染予防や療養に必要なものが売り切れてしまうことがあります。具合が悪くなってからあわてないように、準備しておきましょう。

〈家族構成からみた買い置きポイント〉

(1)乳幼児がいる家庭

 保護者がインフルエンザにかかって、赤ちゃんへの授乳や子どもの離乳食づくりや買い出しが難しくなってしまう場合に備えて、育児用粉ミルク、液体ミルク、ベビーフード(レトルト、ビン詰め)、乳幼児用飲料、紙おむつなどを余分に買っておきましょう。

(2)持病(基礎疾患)がある人がいる家庭

 糖尿病や腎臓病、アレルギー性疾患など、食事制限が必要な病気がある人は、それぞれの疾患に応じたレトルトタイプの食品を買い置きしておくとよいでしょう。

(3)ペットがいる家庭

 ペットフードやペット用トイレ用品などの買い置きも忘れないようにしましょう。


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